Interview

DX、AI・ChatGPT…時代の流れに「学び」で対応し、活用する側に回ろう

コロナ禍とともに一気に進んだDX(デジタルトランスフォーメーション)、AIの進化を象徴するようなChatGPTの登場――時代の流れの速さに「自分・自社はついていけるだろうか」と不安を感じることはありませんか。そもそも、「IT」自体に苦手意識のある人や企業であればなおさらです。

それに対し「『学び』によって苦手の壁をやぶり、『ITを活用する側』にまわってほしい」と話すのが上場企業の創業者としてビジネスの第一線で戦ってきた経営者であり、かつITエンジニアでもあるシステムインテグレータ会長・梅田弘之氏です。

梅田氏が講師として提供する「DX実現に必要なITリテラシーを一気に身につける講座(事業革新ゼミOndemand)」のポイントとともに、なぜいま「ITリテラシー」を高める必要があるのか、そのために必要な学びとは何かをお伺いしました。

聞き手・構成:メディア「事業革新」編集長 小林麻理

世界で29位、日本は「IT苦手」な人が多い?

―日本は国際「デジタル競争力」に関して63か国中29位という調査結果もあるように、ITに対して苦手意識をもっている人も多いと思います。どのような要因があると思いますか。 

 コンピュータシステムに関して言えば、ITを積極活用する気運が弱かった「(政府・官僚)」の問題、外注・丸投げが主流だった「ユーザー企業」や、常駐・派遣主体で価値あるIT成果物を自社で創造する取り組みを疎かにしてきた「IT企業」の姿勢にも問題があったように思います。ITに関する「教育環境」も充分とは言えない状況でした。

 もちろん、いずれも状況は改善していて、いまは国全体でIT力を高めて活用しようという気運があるし、プログラミング教育も充実してきました。また、自社でエンジニアを採用しようというユーザー企業、自社開発した製品をクラウドで提供しよう、というIT企業も増えてきています。

 そして「一般の方」に関しては、若い人を中心にどんどんITを活用している人が増えていますね。ただし、高齢な方を中心に「IT苦手」という方も、まだまだ、多い印象です。

IMD World Digital Competitiveness Ranking 2022より。ランキングは「知識」「テクノロジ―」「将来への備え」という3つの要素で評価しているとのことです。

学びによって「デジタル格差」をなくす

ITに対する苦手意識の要因にもなりそうな、使いづらいコンピュータシステムの改善はぜひ進んでほしいですね。一方で、壁を感じている人自身が「IT苦手」を克服していくにはどうすればいいでしょうか。

 ITに対して苦手意識をなくすためには、まずは、クラウドサービスやスマホで利用できる身近なアプリを使って便利さを実感してみることをお勧めします。そこでITに対する「壁」が取り払われると、一気に世界が広がると思います。そうした意図もあって、講座の最初にクラウドについて説明しました(下図)。

※ 身近なクラウドサービスを使ってみる(Microsoft365の例)
※スマホアプリ×インターネット×クラウドを利用するシステム例

 「IT苦手」のままで困ってしまうのは、世界ではデジタル社会がどんどん進んでいるなか、ITを活用している人との「デジタル格差」が生じてしまうということです。

 それをなくすことができないかという思いから、今回、「事業革新ゼミ」で「ITリテラシーを一気に身につける講座」もつくったわけです。ITに苦手意識を持つ日本の人に「IT力を高めてもらうための活動」は、私自身のライフワークでもあります。 

―社内でデジタル格差があり、「IT苦手」な人に合わせていると、IT導入や効率化がなかなか進まないので困りますよね。苦手な人が社長や上の立場の人だとなおさらです。 

 ITも含め職場の「知識格差」をなくすことが、事業革新ゼミのテーマの1つです。講座のご提供、改めて感謝いたします。 

IT用語を理解し「使いこなす力」をつける

―さて、梅田会長には、22冊の著書がありITエンジニア向けの技術的な解説書も含まれます。そうしたなか、今回、ご提供いただいた講座は、「コンピューターとは」から始まって技術的な知識を掘り下げる内容「ではない」のが、大きな特徴だと思っています(下図)。

はい、ITリテラシーとは「ITを使いこなす力」です。ITというとプログラミングをイメージする人が多いですが、使う」という観点では、いきなりプログラミングや難しいデータベース設計・ネットワーク技術を勉強する必要はありません。

 車を運転するのにエンジンやキャブレターの仕組みまで知る必要がないのと一緒です。「車を使いこなす力」に置き換えれば、カタログに記載の「専門用語の意味」を理解し、マニュアルに記載されている「操作方法」を習得すればいいということです。 

―改めて講座構成を見ると、ビジネスや日常の仕事の各シーンで必要なITリテラシーが身につく内容ですね。また、IT側の人にも、顧客管理や営業活動(第3回)、基幹業務とDX(第5回)などを体系的に整理・解説した内容は新鮮に映りそうです。
 
 エンジニアを含め、自分ではITが苦手とは感じていない人でもMA、SFA、CRMの区別、基幹業務に関連するETLとEAIの違い、そもそもDXとは何か、社内で利用するECMとは…などなど、様々な用語を「改めて説明してほしい」と言われても、きちんと答えられない人が多いものです。
 今回は、そうしたビジネスや実際の業務とITを結びつけるような内容を意識して盛り込みました。

※顧客やマーケティングフェーズに対応する支援システムとの関係
※「DX」そもそも定義を振り返り、音楽業界の例で説明する

MAはMarketing Automation、SFAはSales Force Automation、CMAはCustomer Relationship Management、ETLはExtract, Transform, Load、EAIはEnterprise Application Integration、ECMはEnterprise Content Managementの略、

ChatGPTは「連想ゲーム」の達人

―そして最後に追加いただいたChatGPTなどのAIについて。梅田会長は2019年にエンジニア向けの解説書も書かれていますが、ここまで「身近なもの」になったとは驚きですね。

 ChatGPTの登場によってAIも一般の人が「使える」、「どんどん活用したほうがいい」という状況になリましたね。社内でも勉強会を開きましたし「どんどん活用するように」といま、発破をかけているところです。 

エンジニアなら知っておきたいAIのキホン 機械学習・統計学・アルゴリズムをやさしく解説』(2019年11月・インプレス刊)

―流暢な言葉で回答するChatGPTは、まるで人間のような意思や考えを持っているように感じます。それに対し「怖れ」を抱く人も多いのではないのでしょうか。 

 ChatGPTは、「大規模言語モデル(LLM:Large Language Model)」と言われるAIの1つなのですが、私が説明でよく使うたとえが「連想の達人」です。何か質問をした際に、連想されるものの中から、確率の高いものを導き出します。

 そういう意味で、ChatGPT自体が何か「意思」をもっているわけではないということです。講座では生成AIの概要を過去のブームも振り返りながら解説しました(下図・例)。こうした、仕組みの簡単なイメージを掴んでおくと「怖れ」が軽減すると思いますよ。

※2016年にプロ棋士に勝ったAlphaGOの進化と現在の言語モデルの対比

 また、誤回答も含めて「それっぽい」けど使えないものや、使いこなすためのコツなどは、自分で使ってみるとわかってきます(下図・例)。ですから、スマホアプリと同様、まずは「使ってみる」ことをお勧めします。

 ※実際にChatGPTを使ってみよう(深堀りの質問をしてみる)

AIも数ある「変化」の1つとして向き合おう

―仕組みをイメージしたうえで、「使ってみる」ことは大事ですね。事業革新ゼミの情報発信に関する講座でも「ChatGPT活用」の内容や講座を追加しました。
 一方で生成AIの進化が急激すぎて、仕事として「これまでやってきたこと」に価値がなくなるのではないかという不安を抱く人も多いように思います。
 

 たしかに生成AIの登場と進化は、大きな「変化」ではあります。しかし、これまでも様々な時代の変化が起こり、新しい技術が登場してきました。私自身がもっとも衝撃を受けたのがインターネットの登場ですね。それによって仕事の変化をせまられた人もたくさんいるでしょう。それでも、人々はそれらの変化に対応してきました。

 大切なのは、そうした数々の変化が起こった際、「それ以前」に培ったノウハウをベースとして、新たな時代に必要な知識を学び、対応していくということだと思います。

 時代はどんどん変化しています。いまこそ、「学び」によって苦手の壁をやぶり、ITを「活用する側」にまわってほしいです。

―本当にそうですね。こうした梅田会長の思いとノウハウを詰め込んだ事業革新ゼミの「ITリテラシーを一気に身につけるための講座」。いまこそITの苦手を克服しようという方、会社のデジタル格差をなくそう、という企業の方にぜひご利用いただければと思います。

●梅田弘之氏・Profile


東芝、住商情報システム(現・SCSK)を経て1995年に株式会社システムインテグレータを設立(2006年に東証マザーズ、2014年に東証一部上場)。現在、同社・代表取締役会長CCO製品企画室担当。同社にてECパッケージ「SI Web Shopping(導入実績1100社)」のほか、プロジェクト管理システム「OBPM Neo(同220社)」、統合型Web-ERP「GRANDIT(同1300社)」(コンソーシアム方式で開発)、開発支援ツール「SI Object Browser」(46万ユーザー)など様々なプロダクトをリリースしている。また、『グラス片手にデータベース設計(翔泳社)』シリーズ、『実践!プロジェクト管理入門(翔泳社)』『エンジニアなら知っておきたいAIのキホン(インプレス)』など22冊の著書がある。

お申込み・お問合せ受付中!