「夢があり儲かる事業」を目指そう~山口揚平氏に聞く-前編

ブルー・マーリン・パートナーズ代表として事業創造を支援している山口揚平氏は、事業家・思想家として多方面で活躍。近著『ジーニアスファインダー 自分だけの才能の見つけ方』(SBクリエイティブ/2021年)のほか『1日3時間だけ働いておだやかに暮らすための思考法』(プレジデント社/2019年)『そろそろ会社辞めようかなと思っている人に一人でも食べていける知識をシェアしようじゃないか』(アスキー・メディアワークス/2013年・以下『そろ辞め』)など、ベストセラーを含め、多くの著書があります。
なかでも、ちょうど私(小林)が会社に辞表を出したタイミングで刊行された『そろ辞め』は、今でも私の活動指針の1つとなっています。そこで前半は、本書と当時参加した出版記念セミナーの内容を振り返りながら、新事業に取り組むうえでの指針を伺います。

聞き手/構成:メディア「事業革新」編集長 小林麻理

「価値観」「機能」の二軸でメンバーを捉える

―事業の三大要素として「ヒト、モノ(プロダクト)、カネ」が挙げられますが、なかでも「人」は考え方・捉え方が難しい部分も多いと思います。その点、2013年のセミナーで山口さんが「自分と同じ価値観で違う機能の人と組むと良い」と話されていたことがとても印象に残っています。

一緒にビジネスをする人を選ぶ際、「価値観」と「機能」の二軸で捉えるという話ですね。もっとも選択していけないのは「価値観」が違い、「機能」が同じ人です。

価値観が違うと、意見が異なる際、その「背景」が違うために相手の言うことが理解できません。そして違う機能軸なら最終的には相手の意見を尊重して任せることもできますが、同じ機能軸だとそれができずに揉めてしまうのです。

結果、最適なメンバーは、価値観が共有できて、機能軸が違う人ということになります。

―この価値観と機能の軸は、普遍的なものを感じます。

この考え方は当時もいまも変わりません。ただし、当時と状況が変わったといえば「コミットメント」を得るためのハードルが上がった、ということです。いまは複業が当たり前になっており、社内だけでなく社外も含めてプロジェクトを複数かけもつ人が多くなりました。

そのため、以前は「どれくらいのレベルの仕事ができるか」ということを気にしていたのが、いまは、「仕事にどれだけコミットしてもらえるか」ということ自体に気を配る必要性が高くなっています。

ですから、「パッション」だけではなく、ビジネススキームや将来に向けての収益性といった戦略をしっかりと描き、それを伝えていくことの重要性が以前よりも増していると言えます。

「失敗率」が3割を切るのは、挑戦をしていない兆候

―たしかに、自分のアイデアが「イケる」と思うだけではダメなのはもちろん、ビジネススキームを含めた戦略がしっかりと練られていなければ、人はついてこないですし、事業も成功できませんね。

「センミツ」という言葉の通り、アイデアというものは1000個のうち、3つくらいしか成功しないと言っていいくらいのものです。

僕自身の例で言えば、2013年当時、2年間で事業的なアイデアを書きしたのが150個、行動に移そうと思ったのが10~20個、手を付けたのがせいぜい5個です。つまり、アイデアは常に考え続けること、そしてそれらすべてに手をつけるのではなく行動に際してはよく考えることが大切なのです。

―そうして考え抜いて実行したアイデアでも、挑戦には失敗はつきもので、その許容度が日本では低い傾向があると思います。その点『そろ辞め』では、「失敗率」という言葉で、むしろ「失敗はして当然のもの」と捉えられているのが印象的です。

何を「失敗」とするかの定義の議論は置いておき、「5割成功すればいい」と割り切ることは大切です。失敗率が5割を超えると事業はマイナス方向に向かいますが、逆に失敗率が3割を超えていなければ、「先に進むための挑戦的な判断をしていない」と考えられます。

たとえば「成功率が8割以上」という場合は、オペレーション的な仕事ばかりをしている可能性もあります。大事なのは「失敗したら、次また変えればいい」と意思決定のスピードを緩めないことです。

必要な「キャッシュフロー」と「ビジョン」の二軸

―既存の仕事を含め複数のプロジェクトを並行して進めている際、どれに注力すべきかという「選択」の際の意思決定はとくに重要で難しいと思います。

独立事業者や企業がプロジェクトを選択する際の軸として「キャッシュフロー(儲かるか)」の軸と、「ビジョンとの整合性(夢がある・自分がやるべきことか)」の二軸があります。

この2つはどちらがいいという問題ではありません。様々なプロジェクトをポートフォリオとして管理しバランスよく取り組むのが、複数の事業を営む経営者の視点として必要なのです。そのうえで、全体として「夢があり儲かる」ほうへと向かっていくのが望ましい方向性です。

―既存の下請け事業から、自分ブランドの新規事業へのシフトも、こうしたポートフォリオの視点が大切になりそうです。「安定している(ように見える)下請けより、自分の事業へシフトしていくべきだ」ということは、2013年に山口さんがセミナーでお話されたことのなかで、私がもっとも心に残ったことの1つです。後半では、「夢があり儲かる事業」へのシフトを実現させるためのヒントについて伺います。

後編はこちら
事業創造のプロフェッショナルになろう~山口揚平氏に聞く -後編

 

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