事業創造のプロフェッショナルになろう~山口揚平氏に聞く -後編

ブルー・マーリン・パートナーズ代表として事業創造を支援している山口揚平氏は、事業家・思想家として多方面で活躍。近著『ジーニアスファインダー 自分だけの才能の見つけ方』(SBクリエイティブ/2021年)のほか『1日3時間だけ働いておだやかに暮らすための思考法』(プレジデント社/2019年)『そろそろ会社辞めようかなと思っている人に一人でも食べていける知識をシェアしようじゃないか』(アスキー・メディアワークス/2013年・以下『そろ辞め』)など、ベストセラーを含め、多くの著書があります。

後半では、特に事業創造支援の立場から、中小企業を中心に、新規事業に取り組む際に必要な視点についてお伺いしていきます。

前編はこちら
「夢があり儲かる事業」を目指そう~山口揚平氏に聞く-前編

聞き手/構成:メディア「事業革新」編集長 小林麻理

新事業を立ち上げる「お金」と「時間」を捻出する

―前半では、事業を「ビジョン」「キャッシュフロー」の二軸で捉え、夢があり儲かる事業へシフトしていこうというお話をいただきました。中小企業がこのように事業シフトしていくためにはどうすればいいでしょうか。

多くの中小企業は既存の事業における日常的な仕事に8割以上のリソースを割いているのが実情でしょう。そこでいまは2割以下かもしれない新規事業にかけるリソースを3割、4割と増やしていくことが大切です。

その際、障壁となるのが「お金」と「時間」です。どうしても日々の業務と資金繰りに追われて、新規事業に着手するような余裕のない企業も多いと思います。

「二重経済」の考え方を理解し「価格」設定をする

―「お金」と「時間」を捻出するためにも、提供価値に見合った「価格設定」をしっかりとしていくことが大切に思います。その点、時間とお金の余裕がうまれるに十分な「価格設定」が下請けを含めて日本の事業者ができていないように思います。

僕は、「生活経済」とは別の「世界経済」つまり「二重経済」を理解してほしいと考えています。生活経済においては、同じコミュニティの「生活」に寄り添った価格が必要です。そのため、価格を上げるのが難しいのは、ある程度、仕方がありません。

一方で、世界経済を標準にする際、特にいわゆる富裕層向けのものやぜいたく品においては、それにふさわしい価格付けをしていかなければなりません。

いくら職人がつくる伝統的な工芸品であっても、大量生産品と競争したような安い価格で販売してしまったら、仕事に「誇り」を持てなくなるし、受け継ぐ若い人もいなくなってしまいます。

その点、愛媛県今治市のタオルは高いブランドと価格を維持している日本における成功例だと思います。一度は中国での大量生産で失敗しましたが現在は供給制限を行ない、1枚数千円から数万円といった世界標準の価格付けができているからです。

中小企業で事業を成功させるには、デザイン、グローバルマーケットへの販路、IP(Intellectual Property:知的財産権)の3点をしっかりと構築する視点が大切です。今治タオルには、この3つがそろっています。

必要な「事業創造プロフェッショナル」

―一方で「モノ(プロダクト)はいいのだけど」という中小企業も多いと思います。

新事業を新製品や新商品といったレベルでしか捉えていない人や企業は多いです。しかし、事業創造には「プロダクト」「組織」を中心とした必要な6分野があり(下図)、それぞれ1つも欠けてはなりません。

新事業に挑戦する際には、これら新事業創造に必要な各々の要素の「プロフェッショナルになる」「プロフェッショナルをそろえる」ということが、失敗のリスクを減らす近道になります。

「新事業創造のプロフェッショナルになる」ということは、個人のキャリアとしても安定することにつながります。なぜなら、新規事業プロジェクトにプロフェッショナルとして参画できるからです。

そして、僕自身もその助けができるよう、新事業創造のプロフェッショナルを養成する活動に力をいれていく考えでいます。

チャンスはくる。そのときを虎視眈々と狙え

―プロフェッショナルになるためには準備も必要ですね。山口さんの近著『ジーニアスファインダー 自分だけの才能の見つけ方』では、今後5年間を3つに分けて分析されていて、いま(2021年)は「準備期」と位置付けられていました。

僕は、2021~22年は「準備期(嵐の前の静けさ)」、~23年は「破綻期(クラッシュ)」、~25年は「創世記(夜明け)」になるとみています。準備期は、疲弊した社会システムの中、旧産業がゾンビのように生き残っている時期です。そしてクラッシュを経て夜明けの時代、新産業が台頭するとともに産業の逆転が起こるでしょう。
今の状況では、夜明けはもう少し早くくるかもしれません。

―このコロナ禍で時代は加速し、変化の時間軸は短くなったように感じています。目下、過渡期の状況における挑戦する企業や人へ、最後に応援のメッセージをお願いします。

いまは大変かもしれませんが、「苦しいからもがく」のではなく、インプットを充実させ、「夜明け」にむけての準備をする時期と捉えるとよいと思います。

起業家個人の方へは「新規事業に必要な要素を意識してプロフェッショナルメンバーを集めること」大企業の方には、積極的にスタートアップなどへ資本参加することをお勧めします。

そして、中小企業のみなさんには、今日お話したようなデザイン、グローバルマーケットへの販路、IPの3つを特に意識しながら、これからくるチャンスの時期を、虎視眈々と狙っていただきたいです。

―嵐が過ぎ去るのを「ただ待つ」のではなく、「夜明け」に向けた準備ができるかどうかが、生き残りのカギになりそうですね。『事業革新』でも、その準備を支援したいと考えています。今回は、独立につぎ、会社設立という仕事人生の節目にふたたび山口さんのお話を直接聞くことができ、とても刺激になりました。ありがとうございました!

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