Interview

アイデアは半年でカタチにし社会へ問う~Co-Studio澤田代表に聞く-前編

日本の大手企業で新規事業開発に長年携わってきた澤田真賢氏が2019年に設立、澤田代表自身が直面した「イノベーションのジレンマ」の解決までを視野に新規事業開発を支援しているのがCo-Studio株式会社です。澤田代表に同社ならではの支援スキームと起業の背景・想いについて伺いました。前半は、同社のユニークな支援スキームについてです。

聞き手・構成:MEDIA「事業革新」編集長 小林麻理

新規事業の「0→1」から「1→10」「10→100」まで共にする

―まず、新規事業開発に対する貴社の関わり方について教えてください。

当社では、新事業開発の「0→1」のフェーズから入ります。そしてシリコンバレーのVC(Kicker Ventures)と連携しながら、様々な企業の共創を促しオープンイノベーションを起こすプラットフォームを提供しています。

そして最終的に目指しているのが、イノベーションの実現と社会課題の解決(ソーシャルグッド:社会善)です。(下図)。

―新事業の「0→1」部分の支援というと、ブレーンストーミングやビジネスデザインの整理・設計といったコンサルサービスが頭に思い浮かびます。

一般のコンサル型支援では、新事業の論点設計や分析資料の作成などを手厚く行ってくれます。しかし、それらは社内会議の議論や報告で使用するためだけのものに終始してしまうケースも多々あります。また、新規事業創出に必要なチームビルティングや特許出願、クライアント向けデモなどの支援は個別に依頼する必要があります。

私達はそうした部分的な周辺支援ではありません。最終的なゴールであるイノベーションの実現を目指し、そのプロセスを共にしていきます。

「未来」から「現状」へバックキャスティングする

―具体的にはどのようなプロセスなのでしょうか。

①おもう(近未来の可視化)②かたどる(共想ワーク)、③つくる(試作品の作成)、④ためす(社会に問う)という4つのフェーズがあります。

スタートとなる「①おもう」は「未来」から始めるというのがポイントです。というのも「現状」からスタートすると、その常識にどうしてもとらわれてしまいイノベーションにつながるような非常識なアイデアが出てこないからです。

そこで非常識をあえて引き出す手法として、近未来からバックキャスティング※するという手法をとっています(下図)。

※バックキャスティング(backcasting)は、現状から未来を予測するフォアキャスティング(forecasting)の逆で、未来のあるべき姿から現状を考える発想法。

続く「②かたどる」「③つくる」フェーズでは、ビジネスモデルや特許(知財)なども含めてアイデアを目に見えるカタチにし、実際にその要件を備えた試作品(プロトタイプやPoc:Proof of Concept)を作成します。そのうえで、見込み顧客ともなるユーザーに対してテストを行うのが「④ためす」フェーズです。これを通常6か月程度で実施します。

社内検討の長期化によるビジネスアイデアの「陳腐化」を防ぐ

―かなり短期間ですね。

はい、この短期間で「ためす」フェーズまで実施するというのがポイントです。会議で長期間、議論を重ねすぎたものは陳腐化しやすいからです。それよりも、外の人にプロダクトの価値がわかる原型を実際に見せながら軌道修正したほうがよいのです。

―たしかに「頭でっかち」なプランは実際のニーズを外していたり、長期にわたり、関係者内部で「練られ(たたかれ)」すぎたアイデアというのは、凡庸(無難)なモノになりがちかもしれません。その点、早めに世に問う機会があったほうがよいですね。

外に出すと、当初考えた計画が良い意味でずれてピボット(方向転換)することがよくあります。ピボットは、一方方向の検討では隠されていた事業に必要な要素が見えてくるという点でとても大切ですが、内部の検討だけではなかなか行われにくいものです。

なお、短期間に「ためす」前提として「ためせるもの」も短期間でつくる必要があります。そのため私達はMVP(Minimum Valuable Product)という考え方で、既存のものを活用しながら最短の期間で「価値」が体験できる試作品をつくりあげています。

―企業の規模や業種などは限定されないのでしょうか。

現在、製薬、保険、フィットネス、通信など、様々な業種の企業が利用しています。そして、企業の規模の大小や業種にかかわらず、このプログラムが有効であるという実績が積みがってきています。

また、ためすフェーズでは、「会社設立(Company Creation)」まで支援する場合もあります。私達はこれを「出島戦略」という呼び方をしています。

―ユニークな名前ですね。では後半ではこの「出島戦略」について、そしてこの支援にいたった背景と起業の想いなどについて伺っていきます。

後編はこちら
出島戦略で大企業のジレンマを解消する~Co-Studio澤田代表に聞く -後編

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