信頼のおける情報発信の担い手になる

恐怖本能、過大視本能、犯人捜し本能……ベストセラーとなった『FACTFULNESS』(翻訳書2019年・日経BP社刊)では、こうした人間の本能をよく利用するのがマスメディアだと言い、2020年春からの混乱でそれは顕著に表れました。視聴率やPV(ページビュー)といった表層的な数字を稼ぐためだけに溢れ出した「情報」に「信頼」を取り戻しませんか。

メディア「事業革新」編集長/合同会社事業革新 制作統括役員 小林麻理

PV(ページビュー)の先にいる「読者」は誰?

「情報発信」の担い手として真っ先に思い浮かぶのはTVなどのマスメディアです。そしてWebがない時代はマスメディアとして「雑誌」の存在感は大きなものでした。
雑誌は、内容に応じて購入されるため、とことん読者目線で企画を考える編集者の存在は不可欠です。(ゴシップなどを扱う週刊誌はまた別として)特にビジネス誌や業界誌において、購入の決め手となるのは、購入者に「役立つか」であり、それが、編集者にとってももっとも大事な視点となります(下図)。

そして雑誌は、購入読者に広告を見てもらいたい企業からもお金を得て運営していました。その際は読者層とともに「〇万部発行しています」というのは当然、アピールポイントになります。

しかし、情報を無料で配信するWebメディアが増えるとともに、紙の雑誌は次々と休刊しています。結果、一部の例外はあるものの、Webメディアの運営はより広告に重点がおかれるようになりました。一方、ユーザーは無料で読めるようになった記事を(主にまとめサイトやSNSを通じて)興味が引かれるままにクリックするようになっています(下図)。

それに対して、広告営業の現場では紙媒体時代と変わらぬアピールが続いているようです。つまり「メインサイトのPV(ページビュー)は〇万(ときには〇億)あります」というものです。記事を量産すれば、その分総PV数は増えますから、企画・制作現場では質よりも量、ということになるでしょう。質より量の考え方は、いわゆる「(中身がない・タイトルだけの)釣り記事」「コタツ(でかけるような)記事」の乱発へとつながってしまいます。

2020年春からの混乱で露呈したマスメディアの本質

こうした状況に対し、私がぼんやりとした懸念を通りこして「何か行動しなければ」という強い危機感を持ったきっかけは2020年の春頃から始まった新型コロナウィルスに関する様々なメディアのニュース、とりわけ連日の感染者数のみをフォーカスした報道の数の多さでした。

最初は数週間、数カ月で終わるであろうと思ったそうした報道は(様々な数値指標が把握できるようになってきた)2021年にはいっても続きました。それはなぜか。

その答えのヒントはベストセラーになっている 『FACTFULNESS(ファクトフルネス)10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣』(翻訳書:日経BP社・2019年刊)のなかにありました。本書では「人間の思い込みを作り出す10の本能」を紹介しています。そして、(「マス(大勢の人)」の関心を得ること自体が目的と存在意義である)マスメディアが特によく利用している人間の本能として次が挙げられています。

恐怖本能:危険ではないことを、恐ろしいと考えてしまう思い込み
過大視本能:「目の前の数字がいちばん重要だ」という思い込み
犯人捜し本能:「誰かを責めれば物事は解決する」という思い込み

感染者数というわかりやすい数字は、人々の「恐怖本能」「過大視本能」「犯人捜し本能」を利用して関心を得るには恰好の題材なのです。
だからといって「メディアの人=悪人」でしょうか?本書では(犯人探し本能により)「メディアだけを責めてもしょうがない」というようにも指摘しています。

もし前述のようにマスメディアの人々が受ける会社からの評価指標が視聴率やPVに隔っているのであれば(手っ取り早くそれらが稼げる)人間の本能を利用した感染者数に関するニュースが連日報道された(されている)のは、そうした評価を得るためということになります。
ですから「人」だけを責めず、「数値重視の評価指標」も含めて、この問題を考える必要があるのです。

本書では、この勘違いを避ける最も有効な手立ては、(特に数字が大きくなるほど)ひとつの数字に注目しないことだとされています。数字単体では意味を持たないからです。今回の一連の報道に関しても、日本の感染者数(検査後・陽性判明者)「のみ」に注目せず、(年齢別の死亡者数・重症者数・他国や他の感染症の状況など)他の数字をなるべく多く判断材料として把握することが大切と言えます。

1つの数字に囚われた先の炎上系YouTuber化の危険

さて本来、視聴率やPVは、高い品質の情報が、適切に発信(媒体選択・広告やプロモーションも含む)された「結果」の1つのはずです(下図)。

それにもかかわらず、PVや視聴率だけが単独の目的となって「情報の品質」や「役に立つこと」「情報・発信元への信頼」を置き去りにしてしまったら、炎上系YouTuberのように「とにかく注目を集める刺激的なものを発信したい」という誘惑にかられる情報発信の担い手が増えてもおかしくありません。実際、あえて炎上を狙っていることを思わせる内容のネット記事を見かけることがあります。

そうしたことを踏まえて、私がこの間、前述した強い危機感を感じるに至ったのは、コロナ禍を通じたこうしたメディアの報道によって人々が翻弄され、政府をはじめとした公的機関までも巻き込んだある種の「パニック」に陥ったからです。そして実社会の隅々まで多大な影響を及ぼしたことは、ここで重ねて言うまでもありません。

役立つ情報を発信する企業が信頼を得る好循環を

では、世の中に流通する情報の無料化とPV偏重が進むで、人々の恐怖や不安を煽ってクリック数を稼ぐような無責任な記事の割合を減らしていくにはどうすればいいのか。

それは、(無料が前提の)Webにおいてもクリック数ではなくその情報自体の「価値」が評価されること、すなわち情報発信の目的が「読者に役に立ち評価されること」という従来の紙媒体メディアの原点に立つ「情報発信」の担い手を増やすことが重要だと考えました。

その際の情報発信の担い手は、(マスの関心を得ることが使命の)マスメディアでなくてもむしろよいのです。もっとも有力なのは、メディア運営を通じて長期的なメリットを受けられる企業です(下図)。

メリットについての詳細な説明は本記事では割愛しますが、大切なのは、企業がオウンドメディアをベースに、情報を届けたい相手目線で役立つ情報を発信し続ければ、そこに「信頼」関係が生まれるということです。そして、自社やプロダクトのファンを獲得しながら、コンテンツという知的財産を自社につみあげられという点も大切なポイントです。

新事業の挑戦者にこそ、メディア運営に挑戦してほしい

こうした背景をもとに、当社ではより多くの志ある人や企業にオウンドメディアを運営していただきたいと考えています。

その際、私達の持つメディア短期立ち上げのノウハウをご提供することが、皆様のオウンドメディア構築の近道になると考え、サービスとしてパッケージ化したのが「事業革新・オウンドメディア構築サービス」です。

本サービスを通じ、新事業に挑戦する、志のある人と企業を応援させていただきます。

自社オウンドメディアによって「信頼のおける情報発信の担い手」となり、プロダクトブランディングを通じて新事業を推進しようと考えている人と企業の皆様に、ぜひサービスをご利用いただければ幸いです。

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