「事業革新」内の特設サイトとして、「コンテンツ」を中心とした情報発信の戦略と実務を学べる「情報発信-企画室」をオープンしました。本記事では「伝わらなければ存在しないも同じ」という、クリエイティブディレクター佐藤可士和氏の言葉を起点に、サイトの内容やカバー画像に記した情報発信に関する「心得5箇条」についてご紹介します。
伝わらなければ相手にとって存在しないも同じ?
「伝わらない」のは相手にとって「存在しない」のと同じ――これはホンダNシリーズなど数々のブランドデザインを手がけプロダクトや企業を成功に導いているクリエイティブディレクター佐藤可士和氏が2013年放送・カンブリア宮殿で言っていた言葉です。
このことは、日本では往々にして当たり前ではないように思います。佐藤氏自身、番組内で「日本人・日本企業は口下手で、いいものをつくっていれば、黙っていても売れるとまだ信じている」と話されています。
つまり、日本人は情報の受け手に「わかってもらう」ことに期待しすぎてしまうのです。実際、日常の暮らしのなかで黙っていても「わかってもらえる」こともあり、それが日本人の「優しさ」とも言えます。しかし、顧客相手のビジネスで、残念ながらこの考えは基本的に通用しません。
「言わなければわかってもらえない」のは当たり前で、価値観が多様化している現在はなおさらです。「伝わる」前提として、まず「伝える」ことが大切だということです。
そして「伝わる」は「伝える」のさらに先です。「伝えたい」と思っていることを「伝わる」に引き上げるにはコツやノウハウが必要です。コンテンツを「伝わる」内容にするにはどうするか、その点を「情報発信-企画室」では扱っていきます。
コンテンツ制作現場の「暗黙知」を継承する
また、「情報発信-企画室」では、実務を学べる講座も開講しています。コンテンツを利用した情報発信をしたい(するように上司から言われた)けど、文章に自信がない、どのように書いたらいいかわからないというお悩みもよく聞きます。
そうしたお悩みに対し、私が18年間、紙とWeb、雑誌・書籍など様々な媒体で、記者・編集者として培ってきたノウハウをお伝えする「コンテンツ制作講座」を開いたところ(努力する方向性を間違えていたことに気づいた、何をどうすべきかわかったと)大変、ご好評をいただきました。
この講座を通じて改めて感じたことは、コンテンツ制作現場の実務ノウハウは暗黙知(言語化されずに人の中に蓄積してきたもの)だらけであるということです。同時に、それらのノウハウは、媒体が変っても、普遍的な部分が実は多いということです。
そこで、そうした制作現場で伝承されてきた「暗黙知」をサイトや講座を通じてできる限りお伝えしていきます。
もちろん、普遍的な部分だけでなくコンテンツに関する新しい表現方法についても積極的に紹介します。たとえば「動くアバターのビジネス活用」などはその一例です。
品質の良いコンテンツも、届かなければ「ない」と同じ?
さて、コンテンツを見て・読んでもらうためには、それにアクセスしてもらわなければいけません。いくら「伝わる」コンテンツをつくっても、相手に見て・読んでもらえれば、つまり届かなければ、これまた「存在しない」のも同じだからです。
ではどうやってコンテンツにアクセスしてもらうか。現在、大きな役割を果しているのがネット(Web)です。ネットの登場によって、CMや雑誌に出稿するような大きな広報予算を持たない企業でも世界に向けて情報発信が可能となりました。さらにSNSやネット広告の普及で情報の発信・拡散手法は多様化しています。
たとえば、時事ニュースでもっともよく使った情報源についてまとめた下図をご紹介します※。
※総務省「令和2年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」の結果より筆者集計・作成
このように、情報源の主役は紙(新聞・雑誌)からWeb(ニュースサイト・SNS)へと移行していることが分かります。
置いていかれず、過信せず。小さく「試す」重要性
前述のように、普遍的な部分が多いコンテンツ制作のノウハウに比べると特にWebの世界の「発信」に関しては、常に新しい手法が登場しており、それらをキャッチアップをしていくだけでも大変です。
そこで、「情報発信-企画室」では情報の発信・拡散方法についてすでに世に出ている知恵を集約。同サイトやメディア「事業革新」の情報拡散において、さまざまな手法を試しながら、実際に得られる知見を共有していきます。
日進月歩のWeb発信の世界で、過去の知見と体験にとらわれていては、あっという間に置いていかれます。かといって「新しいから」というだけで、その方法を過信しても失敗します。
ですから、Web発信におけるさまざまな手法は「小さく」試しながら、使える手ごたえを得たものを取り入れて継続するのが一番で、成長の近道だと考えています。
「当たり前」とは「あるべき姿」、情報発信5箇条とは?
さて、以上を踏まえて「情報発信-企画室」では次の5箇条を情報発信の心得としていきたいと思います)。
一、いいコトも伝えなければ、相手には「ない」も同じ。
だから「伝える」努力をする。
二、伝えても理解されなければ、相手には「ない」も同じ。
だから「伝わる」内容にする。
三、良い内容も届かなければ、相手には「ない」も同じ。
だから「届ける」努力をする。
四、発信手段のトレンドに置いていかれず、過信せず。
そのために「学ぶ・試す」努力をする。
五、「伝わる内容」×「適切な届け方」で「情報発信」の力を最大化する。
最初の2つは情報(コンテンツ)とその質について、3と4は情報の「発信」についての心得で、5つ目がこの2つを掛け合わせて目指す姿です。
当たり前の心得のようですが、それだけ肝に銘じて努力する必要があると考えています。佐藤可士和氏は冒頭紹介した番組で「当たり前とはあるべき姿である。だから(実践するのが)難しいのだ」ということもお話されていました。
難しいことを1人で続けるのは大変です。
新事業における「情報発信」の戦略と実務について一緒に学び、一緒に成長していきましょう。
